完全な真空/スタニスワフ・レム
なんと言ったらいいのか分からないんですが、とりあえずものすごい作品でした。
ざっくり言ってしまえば架空の書籍に対する書評集、となるかと思います。いわゆるメタ構造です。
ただ、アイデア一本槍ではなく、元となる架空の話がまず面白い。話の筋としての面白さもあり、裏に込めたメッセージというか話の深さもある。多分架空の話をちゃんと執筆すれば普通にちゃんとした文学になると思います。
その面白い話を下敷きにして書評を書くというなんともぜいたくな構造。書評もただ架空の話を紹介するだけではなく眼光鋭く分析するので、これはこれで面白い。架空の話の作者が意図せずにおこなってしまったことを指摘するとか、もう、ね。
で、構造としてみると、架空の話と書評が並行して進んでいくので、頭の中で二つの物語/文章が同時進行していきます。疲れます。脳が倍働いています。そしてこの複雑な構造を違和感なく読み進められるのはすごい。スタニスワフ・レムすごい。
さらに、この本の一番最初にあるのが、この本自体の書評。つまり「架空の話の書評集」の書評。もはやもうなにがなんだかですわ。
とにかく面白くて疲れる作品でした。